1963年に先代の津田政一氏が旋盤一台で創業した津田製作所。「困っているお客さんを助けたい」と、他社が嫌がるような複雑で高性能な金属部品にも積極的に対応してきた。その姿勢が徐々に評価され、現在では国内の全自動車メーカーをはじめ、バイク、航空機、船舶、産業用ロボットなどの試作研究開発部品の金属加工を担っている。
導入事例
IoT化を行い業務を改善されている事例と導入企業を紹介します。
製造業
IoTで、現場管理者の意識と言葉が変わった

1963年に先代の津田政一氏が旋盤一台で創業した津田製作所。「困っているお客さんを助けたい」と、他社が嫌がるような複雑で高性能な金属部品にも積極的に対応してきた。その姿勢が徐々に評価され、現在では国内の全自動車メーカーをはじめ、バイク、航空機、船舶、産業用ロボットなどの試作研究開発部品の金属加工を担っている。
先代の職人魂を引き継ぎ、「『できない』と言うのは、やめよう」が口癖の津田義明社長は、IoTをどのように活用し、「できない」を「できる」に変えようとしているのか。長年、津田社長を支えてきた小林秀一部長にも同席いただき、話を聞いてみた。

代表取締役 津田義明 様
1988年入社。創業者である父・津田政一の跡を継ぎ、2008年に代表取締役社長に就任。
趣味は音楽鑑賞。ハードロックからクラシックまで、幅広いジャンルに親しむ。
1988年入社。創業者である父・津田政一の跡を継ぎ、2008年に代表取締役社長に就任。
趣味は音楽鑑賞。ハードロックからクラシックまで、幅広いジャンルに親しむ。

製造部長 小林 秀一 様
1989年、先代・津田政一氏の勧めで入社。趣味は自転車ツーリング。毎週末、しまなみ海道で約50kmを走破しているという。
1989年、先代・津田政一氏の勧めで入社。趣味は自転車ツーリング。毎週末、しまなみ海道で約50kmを走破しているという。
CONTENTS
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機能しない生産管理システム
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定期的に東京に足を運び、最新の技術や情報をリサーチしているという津田社長は、かなり早い段階で、「中小企業もAIやIoTを使わないと取り残される」と感じていた。しかし、そこにはリスクもある。「最新の技術を導入するには、当然ながら資金と時間と人の先行投資が必要となる。そして、それが必ず成功するという保証はどこにもなく、全てが水の泡になる場合もあります。しかし、何もしなければ取り残されてしまいます」このようなジレンマを抱えながら、津田社長は2014年から生産管理システムを導入し、工場内の機械の稼働状況を把握しようとした。しかし、「そこから上がってくる情報は不正確で使えませんでした。なぜなら人間が入力するから。例えば、機械の稼働時間が実際は『2時間17分』だったとしても、現場の社員は『2時間』とアバウトに生産管理システムに入力してしまう。実際の稼働時間と、システムに登録された稼働時間に大きなズレが生じていたんです。これでは見積もりに反映させる正確なデータとして活用することができません。何度も社員に『正確な稼働時間を入力するように』と指導したのですが、なかなか正確なものは出てきませんでした」
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機械の稼働率も、トラブルも把握できず・・・
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当時のことを、小林部長はこう振り返る。「IoT化する前は、社長から、『小林、工場の稼働状況はどうなっている?』と聞かれて、「…工場から音が聞こえているので、動いてますよ」と冗談交じりに答えていました。それくらい、私の方でも把握のしようがなかったんです」さらに、こんなこともあったという。「以前は、機械トラブルを表す赤ランプが灯っても、すぐに把握することができませんでした。夕方になって、『実は、今日は昼からずっと赤ランプが点いて、機械が止まっていたんです』と、担当者から報告を受けるようなこともありました」しかし、IoT化した後はそのような問題もなくなった。「今はモニターを見れば、全ての機械の稼働状況がわかるようになりました。アラームの赤ランプで表示されると、すぐに係長が工場に駆け下りていき、対処できます。そういったことに対するスピード、レスポンスが早くなり、大変助かっています」
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社員のためのIoTだが、最初は歓迎されなかった
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生産管理システムの導入が不調に終わってからしばらく経って、津田社長はある勉強会で「ひろしまサンドボックス」の取り組みに誘われ、参画を決定した。津田製作所がIoTの導入するにあたって、まず着手したのが機械の稼働率の把握である。各機械の稼働状況を示す三色のライト(緑→稼働中、黄色→停止中、赤→アラーム・トラブル発生)のそれぞれに、光センサーを取り付けた。そしてその点灯状況を、現場と管理者用に設置したモニターで把握できるようにしたのだ。「IoTによって生産性向上になれば、仕事の正確性が上がり、社員さんの負担を減らすことができます」
津田社長には、社員にとって働きやすい現場にしたいという狙いがあった。「しかし、新しいものを取り入れることは、必ずしも社員から歓迎されません。抵抗感を示す者もいれば、全く関心を示さない社員もいます」 このような状況でスタートした津田製作所のIoT化。早速、津田社長は生産稼働率のデータを経営会議に持ち込み、管理者や社員たちに公表した。「導入した当初は、社員たちのリアクションはほとんどありませんでした。稼働率が上がっても下がっても、『まあ、こんなもんでしょう』という感じでした」会社のIoTの取り組みに興味を示さない社員たちだったが、約2年の取り組みの中で、徐々にその意識が変わり始めたそうである。
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データを見ることで管理職の意識と発言内容が変わった!
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「次第に管理者の間から、『なんでこんなに頑張っているのに、稼働率が上がってないんだろう?』 とか、『あんなにヘトヘトになるまでやったのに、なぜ計画した稼働率の半分しか達成してないんだ?』といった声が出るようになりました。それまでは感覚的なもので判断していたものが、具体的な数字で管理できるようになって、管理者たちの意識が変わってきたんです。『どうやったら稼働率を上げることができるだろう?』といった声が、管理者たちの間から出るようになりました。1年前と比べると大きな変化です」小林部長はこの変化が、さらに広がることを期待している。「確かにIoTを導入してから管理者層言うことが変わってきました。今後は、一般社員も同じような意識を持ってくれたら、と期待しています。そうすれば、我が社はもう一つ上の段階に行けるはずです」
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IoTで我が社のビッグデータを構築し、経営戦略に活かす
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今後、IoTをどのように活用したいか、津田社長に聞いてみた。「この2年間、デジタルソリューションさんに、『稼働率をグラフで見せてほしい』とか、『パーセンテージで見せて』とか、『8時から17時まで時間を区切って見せて』といった具合に、細かく要望してカスタマイズしました。そして、かなり現場の担当者が見やすく、使いやすいシステムに仕上がりました。日々積み重なっていくこれらのデータを“我が社のビッグデータ”として、活用できると考えています」具体的には、どのような活用イメージなのだろうか。「稼働率と売上データなどの経営情報と付き合わせて、次の経営戦略を立案するために役立てることができると思います。そして最終的には我が社のデジタルトランスフォーメーションにつなげていきたい。まだ具体的なイメージは浮かんできませんが、まずは生産効率を向上することに役立てていきたいですね」今後、どのような『できない』を『できる』に変えていくのか。津田製作所のこれからの発展に期待したい。
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- これまでのITツールを取り入れようとしたが、うまく定着しなかった。
- しかしDBoxのIoTプロジェクトは有益な効果をもたらした。
- 新しい取り組みに対して抵抗感があった社員も、意識と発言内容が変わった。
- 日々蓄積されるIoTデータをビッグデータとして活用し、経営戦略に生かしていきたい。
まとめ
社員の意識と発言内容を変えた稼働率の見える化
COMPANY PROFILE
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